今回は木材についてですが、えー・・・木材って、痩せますよね?(ざっくりすぎますか)

木が収縮して隙間が空いたりするというのは、木工をされている方に限らず、一般的にも知られています。

ログハウスの場合、この木材の収縮によって、建物の高さ自体が5センチや10センチほど、当たり前のように下がります。この現象をセトリングといいますが、当然ログハウスにはセトリングが起きても不具合が起きないよう、様々な工夫がなされています。

では、このセトリング、なぜログハウスに起こって、在来工法やツーバイフォーには起こらないのでしょうか?

私も仕事柄色んな本を読んで勉強をしましたが、木が痩せるという事実を書いてはいても、その理由は不明瞭だったり、書いてはいるが逆に学術的すぎて、何書いてんだか分からないという本ばかりでした。
水分が飛んで収縮する・・・簡単にいえばそうなんですが、もう少し深堀りしたいと思います。

なかなかいい本が無かったのですが、ついにインターネットのヤホーで、いい本を見つけたのです。
(ホントは本屋で見つけた)
それは、これ。日本実業出版社の「木と木材がわかる本

これはまさに、納得のいく説明が、きっちりと、それでいて簡単に書かれています。
以下の説明は、ほぼこの本からの引用です。
引用ですが、「~だそうです」みたいな書き方は読むほうも面倒なので控えます。
ですので、申し訳ないですが「俺が発見したんだぜ」感があったら、ごめんなさい。

先程の在来工法やツーバイフォーはなぜ建物が低くならないかですが、厳密には収縮によって低くなっています。
ただ木材を木が立っていた状態で考えると、高さ方向の収縮というのはごくわずかなので、あまり気にする必要はありません。
比率でいうと、立木を見た場合、高さ:太さ:円周方向の収縮の比率は概ね1:12.5:25です。
つまり材木が横倒しのログハウスで5センチ縮む状況でも、同じ状態の材木なら、在来工法では2ミリしか縮まないことになります。これなら、建物に特別な仕掛けは必要ではないですね。
ただし2×4や、通し柱のない2階床組のある軸組の場合、1Fと2Fの境で外側に張り付ける合板と合板の間に釘1本分の収縮スペースを開けたりしています。

では木材の構造はどうなっているのでしょうか?

木材は、ちょうど鉄筋コンクリートのようになっています。
鉄筋を何本か針金で束ね、横筋などを結束してコンクリートを充填したのが鉄筋コンクリートですね。
木材の場合、セルロースが多数束ねられて結晶化したミクロフィブリルが鉄筋にあたります。
この鉄筋を、針金にあたるヘミセルロースが束ね、コンクリートにあたるリグニンが充填されて細胞壁を作ります。
セルロース:ヘミセルロース:リグニンの比率は、樹種による違いはあれ、おおよそ5:2:3です。
鉄筋コンクリートはほとんどがコンクリートなので、比べると随分と鉄筋が多いですね。
細胞壁はさらに方向を変えて4重の構造になり、合板のような手段で強度を得ています。

木は生きている時、地中の水分を葉に送りますが、それは幹や枝の中にある導管仮導管といったパイプの中を通して行われます。
伐採直後の木は大量の水を含んでおり、その水は二種類に分類されます。
1つはスポンジに含まれるような状態で存在する自由水、もう1つは細胞壁内に分子の状態で含まれる結合水です。
木材が乾燥するときはまず自由水から抜けていき、次いで結合水が失われていきます。
この時、自由水が失われても木は極端には収縮せず、結合水が失われ始めると本格的に収縮します。
結合水が抜けると、ミクロフィブリルの表面に付着した水分子が抜け、ミクロフィブリル同士の間隔が縮まるからです。

自由水が失われ、細胞壁内が結合水で満たされた状態を繊維飽和点といいます。この時の含水率が約28%
さらに乾燥が進むと、やがて結合水が失われ周囲の湿度とバランスのとれた状態、気乾状態に落ち着きます。
日本の平均気乾状態は約15%

と、ここまでは「木と木材がわかる本」を参照して書きました。

私は20年程前、北米式輸入住宅施工セミナーを受講したことがありました。
その時の講師の建築士の方が言っていたのですが、たとえば米松の場合、結合水が4%失われると、木は板目方向に1%縮まる。
だいたい日本に来る木材は含水率24%付近で建築され、その後16%程度になる。
この8%で板目方向に2%収縮するので、20センチ幅の板目は19.6センチになる。

この数値は、私がマシンカット・ログハウスを組んでいる時の実感に非常に近い感じがします。
高さ15センチのログ材は1枚につき3ミリ縮み、ドアの高さ12段分ほどでは、36ミリ縮む。
これはかなり現場から見ても納得のいく数字です。
講師のあげた例は北米式のため米松(ダグラスファー)でしたが、北欧式のパイン、レッド・パインでも、そう多くは変わらないという感じがします。

長くなりましたが、こういった理由により木材は収縮するということが分かりました。