先日、またまたロケット・ストーブの見学に行って参りました!

 場所は長野県軽井沢町追分のカフェ、「だぁーちゃ」さんです。
今回でロケット・ストーブの見学は3台目。

1台目は山梨県北杜市長坂の「キッチン・オハナ」さん。
2台目はストローベイル・ハウスを開発されている大島秀斗さんの「日向の家」(岐阜県)に設置されていたもの。

 そして今回、初めてのレンガ製ロケット・ストーブです。
ロケット・ストーブというとペール缶で自作するイメージが強いですが、今回はロシアのペチカ並に規模の大きいものです。

 この作品は、知る人ぞ知る建築家、「杜の工房」の両川正さんの設計によるもので、日本ロケット・ストーブ普及協会が発行している、ロケット・ストーブ ・マニュアル改訂版の83ページにも作例として紹介されているので、ロケットストーブファンの間では結構有名かもしれません。

 ちょうど仕事で八ヶ岳から群馬県の安中市に行ったので、帰りに寄り道をすることにしました。
両川さんとは以前、軽量藁土断熱のワークショップに参加させていただいていたので、携帯で見学したい旨を連絡。
すると「だぁーちゃ」さんの方に私達夫婦が寄ることをお知らせしてくださいました。

 ネットで事前に場所を調べようと検索すると、「うさこの信州おひとり様カフェ」で有名な、うさこさんのブログに到達。
「看板が無いので通り過ぎてしまう」という貴重な情報をゲットしました。

 注意深くHPの住所付近を走ると、確かにありました。看板の無い(というか小さい)カフェ。
外壁が火山灰由来のシラスを塗った洋風の建物で、いかにもロケット・ストーブを設置してそうな雰囲気です。

 車を降りて看板を確認すると、やはりここでした。
店の入口で、妻を記念撮影。

 漆喰塗の玄関ホールから店内に入ると、ストーブよりもインパクトがあるのは巨大なスピーカー。
この店にはジャズのレコードがたくさんあって、店内では高音質のジャズを楽しむことができます。

 ロケット・ストーブ自体は、お店の一番奥に設置されています。

レンガの重厚な感じが、お店の落ち着いた感じとベスト・マッチ!

 カウンターでは常連さんと、オーナー様ご夫妻が談笑。
店内に入って、両川さんの名前を言うと、
「さっき連絡がありました。ロケット・ストーブの見学ですね。じゃあロケット・ストーブの近くの席がいいですね」
と言うではありませんか。うーん、事前連絡しといて良かった。

 6人掛けテーブルに二人で座るという気を遣う状況でしたが、そんなことは微塵も感じさせない温かい雰囲気。

 私たちは、夫婦二人してケーキ・セットを注文。(コーヒーが自家焙煎です!)

 数枚の写真を撮って、おいしいケーキセットを食べ終わると、そろそろ閉店時間だったようです。
常連さんが帰ると、閉店時間にも関わらず、オーナーの今村さんがこのストーブを作ったきっかけや構造などを詳しくお話ししてくださいました。

 きっかけは今回省略します(ぜひお店に訪れてください!)が、構造や燃焼理論に関しても非常に興味深いものでした。
ロケット・ストーブというのは発展途上であるため、薪ストーブ以上に欠点も覚悟の上で導入することが必要だそうです。
そのため、オーナー様自信が燃焼理論を研究している場合が多く、とても参考になります。
(キッチン・オハナさんのオーナーさんのブログでも、流体力学にまで話がおよび、「ベルヌーイの定理」や「カルマン渦」といったカルトな用語が飛び出してきます)
ただ、毎回そうなのですが、もともと ロケット・ストーブ 自体が自作を奨励していて、特許などもなくオープンソースのような状態にあるため、皆さん惜しげもなく理論や情報、建材や失敗談など詳しくお話ししてくださいます。

 それでは、まず構造から。

最初に焚き口ですが、通常のロケット・ストーブと同じく、上から燃料を入れて横に吸い込まれる感じ。

 炎の吸い込みを良くするため、焚き口が小さめなのもロケット・ストーブによく見られる特徴ですね。
そしてロケット・ストーブの心臓部であるヒートライザーですが、良くあるのは、ドラム缶を二重にし、間にパーライトなどを入れて断熱するというもの。
ところが今回はレンガ製で鋼板よりは断熱性があるため、そういった断熱構造にはなっていないということです。

 本体の天板はヤカンを置いて加湿できる程度の熱さ。そしてストーブ本体の中央部にはオーブンが備えてあります。

 ストーブ本体からそのまま繋がってL字型のベンチになっており、ストーブの熱が煙突から出る前にまずこのベンチの中をトンネルのように通過するため、ほっこり温かい、床暖房ならぬベンチ暖房になっています。
ここら辺はキッチン・オハナさんと同じですが、オハナさんは土の塗りでしたが、「だぁーちゃ」さんのは、すべてレンガです。

 煙突を触ってみると、やはり薪ストーブとは違い、触れる程度の熱さまで下がっています。
ベンチでの放熱が効いているようです。

将来は熱効率の良いロケット・ストーブをメイン・ボイラーにし、薪ストーブで炎を眺めたり来客のおもてなしといったハイブリッド方式も面白いかもしれません。
それには、ロケット・ストーブが更なる改良を重ねて、発展していくことが不可欠ですね。

できればもっとうまく解説したいのですが、文章で書くには色々限界があります。深く知りたい方は、ぜひ「だぁーちゃ」さんを訪れてみて、オーナーさん御夫妻の話を直接聞いて、実物を体感していただけたらと思います。

 ロケット・ストーブのオーナーさんがいつも言われることは、自分はもう一度作ってみたいが、工業製品のように扱いやすい完成品を求める人には勧めないということ。
焚き方や薪の種類や大きさなど、色々と試行錯誤を繰り返さないと使いこなせないということです。

この辺は、ログハウスにも似ていますね。
ログハウスもまた、メンテナンスやセトリング対策など、面倒なことがいっぱいですので、私も、それも含めて楽しめる!という人でなければ勧めません。

 それでも、あなたは挑戦しますか?
イエスと答えた方は、もう立派な「火・熱マニア(パイロマニア)」です。
(ストーブに魅せられた人をそういうらしいです)

 まだまだ発展途上のロケット・ストーブ。
もしかすると、あなたが設計したロケット・ストーブが、この地球のエネルギー問題に革命をもたらすかもしれません!