2020年オリンピックが東京に決まり、経済効果、聖火ランナーなどの話でメディ アが早くも盛り上がっています。
一方で原発問題がまるで何の問題もないかのような安倍首相のスピーチに、多くの国民が違和感を感じていることでしょう。

もはやアマチュア・スポーツの祭典から巨大ビジネスへと変貌した感のあるオリンピックの開会式では、様々なドラマがありました。

1996年アメリカ、アトランタ五輪。秘密にされていた聖火台の点火者はモハメッド・アリ。
これには日本人にはあまり馴染みのない大きな「意味」がありました。
ベトナム戦争当時、モハメッド・アリはボクシングの統一世界ヘビー級チャンピオン。いわば英雄です。
当時アメリカはベトナム戦争を「意義ある戦い」とし、国をあげてこの戦いに向け、国民の士気高揚にやっきになっていました。
ところがモハメッド・アリは徴兵を拒否。
「ベトコンは俺のことを『ニガー』と呼ばない」のセリフは有名です。
政府はアリの王座を剥奪し、国賊としました。

それから数十年を経て、アリの主張は何も変わらず、変わったのは国の方でした。
アリはアメリカの英雄として聖火台の点火者に選ばれたのです。
そこにはアメリカのメッセージ、「私たちは大きな過ちを犯した。だからその過ちを認め、未来に向かっていかなければならない」というメッセージが込められていました。

2000年シドニーの点火者は、現役ランナーでオーストラリアの先住民族の血を牽くキャシー・フリーマン。オーストラリアもまた、先住民族アボリジニへの虐殺、差別という負の歴史を抱えています。
ここでも「臭いものにはフタを」したいオーストラリアが、国の過去の負の歴史に真摯に向き合った瞬間でした。

フリーマンはこの大会において、400メートル走で金メダルを獲得。
彼女の腕にはこんなタトゥーがあります。
「Cos I'm Free(私は自由)」
そして苗字が「フリーマン」ですよ。これはもう運命としか言いようがないですね。
人工の滝をバックに、泉の中でのフリーマンの聖火台点灯シーンの神々しいばかりの美しさを覚えている方は多いと思います。
youtube http://www.youtube.com/watch?v=crO2l-Imbco

私は無理を承知で言いますが、2020年オリンピックの聖火台の点火者は原発事故で故郷を奪われた福島の子供たちであって欲しいと思います。
なぜなら、世界で最も注目される舞台で、
「私たちは大きな過ちを犯した。そして私たちはこの過ちを認め、被災者を見捨てることなく、この問題に正面から取り組んでいきます」というメッセージを世界に発信して欲しいと願うのです。